続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語

カフェBon Bonの準備と並行して進めている、ある商品の在庫処分が、なかなかうまくいかない。

 
俺と大和でいくつか手を打ってみたが、決定打にはならずにいた。

 
ふと、美愛ちゃんの顔を見て思う。きっと、また“あの子らしい”アイデアをくれるんじゃないか。そんな期待が自然と湧いてくる。

 
「うちの会社でね、ちょっと在庫が多く残ってる商品があるんだ。リコリスルート、エキネシア、エルダーフラワー、ダンデライオン……どれもハーブティーなんだけど、どうやったら売りさばけると思う?」

 
美愛ちゃんは少しだけ黙って、考え込む。
その目がくるくると動いているのを見ると、
『ああ、今きっと何かを組み立ててるな』とわかる。


そして案の定。

 
「このハーブティーたちって、風邪のひき始めとかに飲まれることが多いんですよね。
あのね、ギフトセットにして伊乃国屋さんで販売してみたらどうかな?さっきロビーで会ったドイツ人のご夫婦が言ってたの。
『これらのハーブティー、日本ではなかなか手に入らない』って」

 
おお、来た来た……!

 
「伊乃国屋の顧客って、駐在で来てる外国人家族が多いでしょ?ちょうど今の時期、風邪をひきやすいから、そういうセットがあると助かるかもって思ったの。いくつか種類を組み合わせて、ハーブティーだけのシンプルなセットとか、マグカップつきのギフトセットもいいかなって。Bon Bonのロゴ入りのカップとか、……、ぬいぐるみを入れたら可愛いと思うけど、今からじゃ間に合わないかな〜」

 
その言葉を聞いた瞬間、俺は思わず笑ってしまった。

 
「いいじゃない、いいじゃない、そのアイデア! 俺たちにはそんなこと思いつかなかったよ」

 
自然と声が漏れていた。正直、この手の発想は俺にも大和にもなかった。美愛ちゃんだからこそ気づける視点だ。

 

すぐにスマホを取り出し、大和に連絡を入れる。話を伝えると、やる気満々の声で即答が返ってきた。


「それ、いいアイデアだね。ロゴ入りのカップとぬいぐるみ、それからエコバッグもつけて、ギフト仕様にしよっか。ただ、ロゴグッズはBon Bonのオープン日、2月からの販売になるかな」

 
ありがたいことに、彼はすでにデザインチームとも動き始めてくれるらしい。

 
俺はスマホを置き、ゆっくりと美愛ちゃんの方へ顔を向けた。

 
「悪い、美愛ちゃん。せっかくの旅行中に申し訳ないけど、ひとつだけ今、やってほしいことがあるんだ」

 
彼女はほんの一瞬だけ驚いた顔を見せたあと、すぐに、ふわっと優しい笑顔でうなずいた。


「はい。今すぐ、取りかかります」

 
その姿に、胸がじんと熱くなる。


旅行中なのに嫌な顔ひとつせず、
しかも誰よりも仕事を楽しもうとしてくれる。本当に、俺にはもったいないくらいの子だ。

 
彼女の存在が、俺の中でどんどん大きくなっていくのを感じる。こんなふうに、隣にいてくれる人を大切にしたいと思えるのは──
もしかしたら、生まれて初めてかもしれない。