私が提案を口にしたその瞬間、雅さんはすぐにケータイを取り出し、誰かに電話をかけはじめた。


その真剣な口調から、相手はおそらく大和副社長だろう。


「このセットは箱詰め?」


いきなり話を振られて、思わずきょとんとしてしまう。


「えっと……、箱でもいいと思いますが、小さめのエコバッグのようなものに入れて、会社のロゴをワンポイントで入れるのも、可愛いかと……」


少し緊張しながらも、なんとか意見を伝える。


でも、今から準備するにはやっぱり時間が足りないかも……?
そんな私の不安を察したように、雅さんが少し申し訳なさそうな声で言った。


「旅行中に悪いけど、今ひとつだけ、お願いしていいかな?」

それはどのハーブティーを組み合わせてセットにするかを、リストにしてほしいということだった。


「はいっ、今すぐ取りかかります!」


頭の中にある知識を頼りに、すぐに分類を考える。


旅行中なのに……、と思われたかもしれない。でも、私は嬉しかった。頼りにされたことも、アイデアをちゃんと受け取ってくれたことも。


この人のそばで、力になれることがあるなら私は、どんな時でも応えたいって思った。




*リコリスルート、ペパーミント、カモミール(喉の痛み)

*エルダーフラワー、ローズヒップ、エキネシア(風邪の初期症状)

*ペパーミント、レモングラス、ダンデライオン(胃の不調)



この3セットを提案し、タブレットにまとめて見せる。


「雅さん、できました」

「ありがとう。すぐに大和に送るよ」


そう言って、雅さんは忙しそうにタブレットを操作しながら、電話で連絡を取っていた。

……、でも思ったの。
風邪や胃の不調じゃなくても、ハーブティーって、その日の気分や香りで選びたい時がある。もしBon Bonのウェブサイトで、自分の好きな組み合わせを自由に選べるようになったら。それって、世界にひとつだけの“オリジナルギフト”が作れるってことじゃない?

お茶だけじゃなくて、Bon Bonのお菓子も一緒に選べたら……、なんだか、夢みたい!

──って、あれ? 今の……、声に出してた?


「美愛ちゃん、それ、すごくいいアイデアだね。これも大和に知らせなきゃ」


やっぱり……、言ってたんだ。恥ずかしい……。