今、私は離れのお部屋にある露天風呂にひとりで入っている。


雅さんはすでにお風呂を済ませ、今は書類に目を通しているらしい。邪魔にならないよう、私は静かに湯に身を委ねていた。

 

はぁ〜、やっぱり温泉って、最高に気持ちいい。


でも……、たぶん今夜が私たちの“初めて”になるんだよね。

 
昨日の夜、姉の圭衣ちゃんと葉子ちゃんが私の部屋に来て、いろんなアドバイスをくれた。

 

『初めては、本当に好きな人と』

『嫌だったら、はっきり「嫌」って言うのよ』

『無理はしちゃだめ』

『でも、雅さんに任せておけば大丈夫』

『めっちゃ痛いって聞くけどね』

『絶対、避妊はすること!』

『でも、あんまり待たせすぎると……、浮気されたり、捨てられたりするかも』

 
──え、えっ!? 結局どうしたらいいの!?

 
“無理するな”って言いながら、“待たせるな”とも言ってくる姉たちの助言に、もう私の頭の中は大混乱だ。

 

でも私の初めては、やっぱり雅さんがいい。これからも、ずっと雅さんがいい。

 
みんな『初めては痛い』って言う。それに……、裸を見られるんだよね?……、私、胸も小さいし、スタイルにも自信なんてないし。こんなんで、雅さんを満足させられるのかな……。

 
だって、雅さんは大人で、しかも10歳も年上。今までにそういう経験があるって、自分で言ってたし。


今日も観光中、私が化粧室に行っている間に、何人かの女性に声をかけられてた。

 
あんなにモテる雅さんと、地味で小さな私は釣り合わないんじゃ……。

 
このままだと、やっぱり捨てられちゃうのかな。


……、なんて、考えすぎだよね。うん、大丈夫、大丈夫……。

 
よし、そろそろ出よう。