コンネリシャス王国の  恋物語

全くみんな口を差し挟む暇もない。

王妃様はプロシットパイクリームを陛下に持っていこうとお皿も持って立ち上がりかけた姿勢のまま唖然としている。

ドアがぱたんとしまったとたんイリスとアルクはハッとしてチーズケーキに目をやる。

さすが年長のイリス素早くチーズケーキを自分のお皿に取る。

アルク第二王子はそれを見て

「姉様半分ください」

と目じりを下げて泣きそうな顔をして言った。

子犬が、待てをしている情けない顔つきだ。

王子を子犬に例えるなんて、決して口には出せないがルルは笑いをこらえるのに必死だ。

でもイリスは非情だ。

「嫌よ。これは私一人で食べるの。
だいたいアルクもお母様も
呼んでいないのだから、私とルルの間に
勝手に割り込んできて食べ散らかす
なんて許せない」

アルク第二王子の目がウルウルしてきて決壊寸前だ。

王妃様は大きく息をついて

「分かったわ、アルク。
お父様にはこのなんだっけ?新作の
パイクリームと焼き菓子をもらっていくから
このチーズケーキはアルクがいただきなさい。
後で、ジュオンにはきつく言っておくわ。
三つも独り占めにしてせっかくルルが
家族にと五切れ持ってきてくれたのに…
ほんとにもう困った人ね。
ルルごめんなさいね。お騒がせしちゃって
恥ずかしいったらないわ」

そう言うと大きなため息を一つついて、陛下の執務室に向かった。