「セレスは幸せだったよ。
最後にルルに手を握られて微笑んで
旅立っていっただろ?
ルルだけを見つめて幸せそうに
微笑んで目を閉じた。
セレスが首にいつも下げていた皮ひもの
先には小袋がついていてそこにはRと
彫られた木のボタンが入っていた。
母さんがルル用に作ったボタンだ。
いつか取れたのを拾ったんだろう。
それを肌身離さず持っていたよ。
退役して五年、早い死だったが、
セレスは全身全霊で一人の女を愛し
命をも掛けて守っていたんだ。
騎士としてこんなに名誉なことは無いし、
男としても最後まで愛した人に変わらぬ
想いでいられたんだ。羨ましいよ。
セレスにとっては最高に幸せな人生
だったと思うよ。
だから、ルルが泣く必要はないんだ。
時々こうして花を手向けてやってくれれば
それでいいんだ。なあ、セレス」
フェイレアは今近衛騎士団長として騎士団を率いている。
セレスも護衛騎士でなければ未だに現役として騎士団の役職についていただろう。
護衛騎士は五十歳までと決まっているのだ。
セレスは家族も持たず子も成さずルルの護衛騎士を最後まで勤め上げたのだった。
セレスは多くを語らず何時も寡黙だったが、ルルの子供たちを大切に思い接してくれた。
なので子供たちは皆セレスが大好きだったのだ。
王子たちは剣の師として王女たちはいつも抱き上げて肩車をしてくれる優しいおじさんとしてセレスを慕った。
そんなセレスがなくなったのは春のうららかな日だった。
最後にルルに手を握られて微笑んで
旅立っていっただろ?
ルルだけを見つめて幸せそうに
微笑んで目を閉じた。
セレスが首にいつも下げていた皮ひもの
先には小袋がついていてそこにはRと
彫られた木のボタンが入っていた。
母さんがルル用に作ったボタンだ。
いつか取れたのを拾ったんだろう。
それを肌身離さず持っていたよ。
退役して五年、早い死だったが、
セレスは全身全霊で一人の女を愛し
命をも掛けて守っていたんだ。
騎士としてこんなに名誉なことは無いし、
男としても最後まで愛した人に変わらぬ
想いでいられたんだ。羨ましいよ。
セレスにとっては最高に幸せな人生
だったと思うよ。
だから、ルルが泣く必要はないんだ。
時々こうして花を手向けてやってくれれば
それでいいんだ。なあ、セレス」
フェイレアは今近衛騎士団長として騎士団を率いている。
セレスも護衛騎士でなければ未だに現役として騎士団の役職についていただろう。
護衛騎士は五十歳までと決まっているのだ。
セレスは家族も持たず子も成さずルルの護衛騎士を最後まで勤め上げたのだった。
セレスは多くを語らず何時も寡黙だったが、ルルの子供たちを大切に思い接してくれた。
なので子供たちは皆セレスが大好きだったのだ。
王子たちは剣の師として王女たちはいつも抱き上げて肩車をしてくれる優しいおじさんとしてセレスを慕った。
そんなセレスがなくなったのは春のうららかな日だった。



