ベイビー•プロポーズ


どうやら私は碧葉の姉としてじゃなくて、黎関連で覚えられているらしい。


それにちょっと待って、実物のほうが可愛いってどういうこと……?


「黎のスマホの待ち受け、萌葉なの知ってた?」


碧葉からのアンサーに「え?」と目を丸める。そんなの初耳情報だ。


「前に萌葉のLINEのアイコンだったやつ。パンケーキと一緒に写ってる写真」

「あ、黎が見せびらかしてるわけじゃないっすよ?たまたま待ち受けが見えちゃって、勝手に俺らが盛り上がちゃった感じで」

「まさか女に微塵の興味もない黎に彼女が!?って一時期すごい話題になったんだよな」


それがいつのことなのかは分からないけど、碧葉からも黎からもそんな話は聞いたことがなかった。


「……それで、黎は私のこと、なんて?」


思わず口にした私の質問に答えてくれたのは、右側にいた少したれ目の男の子。


「好きな子って言ってましたよ」

「……」

「もうそれでクラス中大盛り上がりっすよ」

「しかもそれが碧葉の姉ちゃんだっていうからそれもびっくりで」

「いや~伊藤家の血って強いよな。お姉さんまじで可愛い」

「それな。あの黎が好きになるのもわか、」


マシンガンのように次から次へと喋っていた2人が急に言葉を区切ったのと同時。強めに右腕を後ろに引かれて、傾いた私の身体はふわりと包み込まれた。


「ねえ、もえは俺のなんだけど」