「2年5組メイド&執事喫茶はこちらでーす」
「イケメンも可愛い子も揃ってるから遊びにきてね〜」
少し離れたところからこちらに向かって歩いてくるのは白シャツに黒ベストと黒ズボン、完全な執事コスプレを着こなした3人組。
左右の2人が声を張りながら宣伝をしていて、真ん中の1人は段ボールで作られた宣伝ボードを首から下げているだけ、にこりともせずにただただ歩いている。
列に並んでいる人たちはもちろん、廊下の端にいる人たちも3人組に釘付けになっている。さらには彼らの後ろにはまるで大名行列のように、10人以上の女の子たちがくっついて回っていた。
その3人の中でダントツの美形、真ん中で1番視線を集めているのが碧葉なわけで。
毛先をくるくると遊ばせ前髪もアップにしている碧葉はいつも以上にかっこよく見える。左右の2人もイケメンだけど、やっぱりうちの碧葉がダントツかっこいいわ。
――なんて心の中でブラコンを爆発させてみる。
その場で美郷と優弥に「あの真ん中にいるの、私の弟」と告げると2人共やや目を丸めた後に「確かに目元が萌葉だわ」と私たちが姉弟であることに納得していた。
「お、萌葉じゃん」
ここでようやく、視線を上げた碧葉が私の存在に気付いた。


