私に大きく拒否されたことがかなりショックだったのか、肩を掴んでいた両手が脱力したようにするする下へと下がっていく。きゅっと唇を一直線に結ぶ黎の表情に心が摘ままれたように鈍く痛んだ。



「最近の黎、なんか変」

「……へん」

「強引というか、……焦ってる、感じがする」


視線を黎の胸元へと逸らし、たどたどしく発した言葉。これはずっと感じていたことだった。


前からストレートな言葉を向けられることは多かったけど、私のベッドに入り込んできたり、私を押し倒したり、キスを迫ってきたり……。それに不貞腐れモードに入ることも増えた。


最近の黎はなんだか強引で余裕がないように見える。


黎がそうなった原因が私にあることくらい分かってる。黎の真っすぐな気持ちに応えてあげない、だけど完全に拒絶することも離れることもしない、曖昧な態度を取っている私のせいだと。



「俺、焦ってる?」

「うん、そう見える」


私の言葉に少し目を見開かせた黎は、何かを考えこむように視線を右上に移した。


そこからしばらくして「あー……そっか」と納得したように静かに声を落とした黎と再び視線が交わった。


「俺、焦ってたんだ」


ここで黎は自分の焦りをようやく自覚したらしい。