肩を揺らしながら乗っかっている頭を振り落とそうとすると「わー、わー、」と黎は間延びした声を上げる。
「重い!暑い!」と黎の身体を横へ押し返すと、渋々頭をどかした黎は「もえ、楽しいね」と満足そうに私を見つめてきた。
「……黎が楽しいならよかったよ」
「もえは?」
「私?うん、ちゃんと楽しんでるよ」
「よかった」
安心したように脱力した黎が再び私のほうへ倒れこもうとするので、それをすんでのところで押し返した。
こんなの本物のバカップルじゃない?
今までの彼氏とだって、こんな風に外でくっついたことはないのに。
なんだか急に恥ずかしくなって周りを見渡してみると、黎のように頭を彼女の肩へのせていたり、後ろから彼女を抱きしめていたり、完全に自分たちの世界に入り込んでいるカップルたちで溢れていた。
ただ、そんな風にくっつき合っている子たちは明らか若い、黎と同世代の10代カップルなわけで。
そんな若い子たちを見ていると、余計に自分が黎の隣に並んでいいものかと自信がなくなってしまう。
黎の隣にいるのはもっと若くて可愛い子の方がいいんじゃないかと。
黎と一緒に並んでいるといつもそう。私らしくない負の感情にもやもやと心が支配されてしまう。
そんなことを思いながら並んでいると、ようやく私たちが乗る順番にたどり着いた。


