「ねえねえ、すっごい美男美女カップルだったでしょ?」
「……」
「沢城先輩ってかっこいいけど社内ではちょっと近寄りがたい感じなのね。女性の社員と仕事以外の会話は滅多にしないからさ、そんな先輩の彼女ってどんな人なんだろうってずっと思ってたけどあれは納得だよね〜」
「……」
「もう想像以上の美人だったし、絶対性格もいいよね。通り過ぎた時もめちゃくちゃいい匂いしたの分かった?」
席に座って一息つくと、抑えていた興奮が溢れ出してきて。頬杖をついて黙ったままの黎に構わず1人で喋り続けていた。
「俺はもえがいい」
「ん、……ん?」
「もえの方が可愛い」
「いやいや、それはフィルターかかりすぎ」
いくら黎が私に好意を持ってくれているからってそれはあり得なさすぎる。私と沢城先輩のあの美人な彼女さんを比べることすらおこがましく感じてしまう。
それなのに黎の瞳は至って真剣で。頬杖をやめた黎は視線はそのままに、両肘をテーブルへとのせた。
「さっきの人がどうとかじゃなくて、もえ以外可愛いとは思わない」
「ん?」
「綺麗とか、美人とか、そういうのも」
「……」
「もうずっと昔からそう。もえだけが特別」


