ベイビー•プロポーズ

「そうなんだ。初めまして、こんにちは」

「あっ、初めまして」


沢城先輩に向けていた視線を私と黎へと移し、ふわりと上品な笑みで挨拶をしてくれた彼女さん。


女性の私でもうっとりとしてしまう微笑みに数秒目を奪われた後、ふと、私の半歩後ろにいる黎へ目を向けると、その表情は通常運転の"無"だった。


「黎、会社の先輩です。沢城先輩、こちらはえーと、……友人、です」


この流れで黎に沢城先輩を紹介したのはいいものの、黎との関係をどう説明すればいいのか分からなくなって、たどたどしい紹介になってしまった。


友人にしては年が離れすぎてると思われたかな?

どうせ深く追求されることもないだろうし弟とでも言っておけばよかった?


1人頭の中で思考を張り巡らせていると、そんなことを一切気に留める様子のない沢城先輩と黎は「こんにちは」と当たり障りのない挨拶を交わしていた。


「じゃ」といって私たちの横を通りすぎた沢城先輩と彼女さんに会釈をして、私たちは通された窓側の席へと向い合わせになって座った。