ベイビー•プロポーズ


私がおしゃれをするのはあくまで自分のため。自分の気分を上げるため。


今日は暑くなりそうだから首元が少しでも涼しくなるようにポニーテールにした。スタイルがよく見えるからマーメイド形のワンピースにした。
 

別に黎がポニーテールの髪型が好きだからとか、私の読んでる雑誌を覗きこんで俺はこれがいい、と指差したのがマーメイドスカートだったからとか、そんな理由で今日の服装を選んだわけでは決してないんだ。うん、決して。


「……行ってきます」

「いってら〜」

「黎によろしくね」


にやにやと口元の緩みが隠しきれていない2人に見送られながら、なんだか気恥ずかしい気分でリビングを足早に出た。


時刻は正午前。こんにちはとしっかり顔を出している太陽の日差しに照らされながら、少しヒールのある黒のパンプスを履いて向かうのは最寄駅。


てっきり黎がここまでやって来て、我が家から一緒に目的地へと向かうものかと思っていたのだけれど。黎は駅での待ち合わせにこだわっているようだった。