ベイビー•プロポーズ


「7月21日土曜日の全国の天気をお伝えします。都内の最高気温は30度。大変厳しい暑さと――」


点けたままにしていたテレビの電源を切り、立ち上がってお気に入りの香水を振る。黒のショルダーバッグを肩から掛け、自室を後にした。


リビングへ一歩入ると、すぐに感じる2つの視線。


デニム生地のマーメイドキャミワンピに髪型は毛先を緩く巻いたポニーテール。


そんな私の頭のてっぺんからつま先まで舐めるようにじっとりとした視線を送ってくる碧葉とお母さんは、


「「へぇ〜〜〜」」


同じ形をした二重瞼をいやらしく細め、声を合わせて頷いている。


「なによ!」

「俺の姉ちゃんは今日もおしゃれだな〜って思って」

「今日はいつも以上におしゃれで可愛いんじゃない?だってデートだもん」

「あー、そうな。今日はデートだもんな」


態とらしく"デート"と強調する2人。


そう。今日は黎と約束をしていた一緒に出かける日。


正直あやふやにして先延ばしにできないかなあ、なんて思っていたけれど、3週間前のあの日にしっかり日にちを取り付けられてしまった。それが今日。


もちろん私は黎と出かけることは一言も言っていなかったけど、この2人には当たり前に情報は筒抜けだった。