ベイビー•プロポーズ


「土井さんがかっこよかったから……かな?」


求められているだろう答えを若干の苦笑いと共に送れば、「実物と写真、どっちが好み?」と上級者な返しをされた。


「……実物かなあ」

「ははっ、言わせたみたいになっちゃたかな」

「いやいや」

「あ~でも今さ、もえちゃんにぐいぐい来られるのは全然ありだなあって思っちゃった」

「え?」


いやいやいや、ぐいぐい攻めたつもりは全くないんだけど?一応この空気を読んでみただけですよ?


どちらかというと写真の方が好感度は高かったよ。


曖昧にへらりと笑うと、土井さんの瞳がやや鋭く光ったような、気がした。






人見知りをしない性格とアルコール、この2つの力のせいか、その後土井さんとは1時間以上会話が続いた。


お互い計4杯のアルコールを昼から摂取し、ややほろ酔い気分。


混雑しているからと店員さんにお会計を求められ、これでお開きかなと思っていたところ、


「もえちゃん、2軒目どう?」


会計札を手にした土井さんからのまさかの2軒目のお誘いを受けた。


「ここは俺が出すからさ。もうちょっと付き合ってくれると嬉しい」

「いや、私も払うよ」

「いいからいいから。その代わりもえちゃんの時間が平気なら、ね?」


やや哀願するような視線を送られて、ん〜と悩みながらスマホで時間を確認すると、まだ16時前。


土井さんと今後関係を発展させるつもりはないけど、時間もまだ早いし、もう1軒くらいいいかな?


アルコールが入っているせいであまり頭が回らず、深く考えないまま「2軒目、行きましょう」と頷いてしまっていた。