「アプリで積極的に彼女を作ろうとはしてないけどさ、いいな~って子がいれば彼女にしたいなっては思うよ」
「あ、私も積極的に彼氏を作ろうとしてるわけではないかも」
「お、一緒だ。もえちゃんみたいなスタンスの子って楽だからいいな。正直さ、ぐいぐい来られると引いた目で見ちゃうんだよね」
……私は初っ端、土井さんのぐいぐい加減に若干引いちゃったけどな。
自分のこと棚に上げちゃってますよ~と心の中で生まれた少々毒づいた言葉はビールと一緒に飲み込んだ。
「2杯目どうする?」
「赤ワインにしようかな、」
「いいね!じゃあ俺も同じのにしよ」
すいません、と軽く右手を上げた土井さん。目配せをして店員さんを呼び、赤ワイン2つを注文する姿はやけにスマートで手慣れていた。
「もえちゃんはどうして俺にいいね返してくれたの?」
「えっ……」
「ほら、アプリでは積極的に彼氏は作ろうとしてないっていうからさ。なんでかな?って思って」
「あー……それは…、」
ただのタッチミスです!
なんてことを堂々と言えるはずもなく……。口籠る私を見つめる土井さんは、期待に満ちたような爛爛とした瞳を向けてくる。


