ベイビー•プロポーズ



「彼氏が欲しくて始めた感じ?」

「んー……まあそんな感じかなあ」

「もえちゃんならアプリ使わなくても彼氏できそうなのにね」

「私あんまり彼氏と長続きしなくって。年々出会いも少なくなってくるし。それで友達に勧められて登録してみたんだよね」

「あ~わかるわかる!歳重ねるごとに自然に出会うのって難しくなってくるよね」


丁度注文していたランチセットのパスタが運ばれてきて。明太子スパゲティが私の前、アラビアータが土井さんの前へと置かれる。


やっぱりそうだよねえ、と同意をしながら、私側に置かれていたカトラリーセットからスプーンとフォークを土井さんへと手渡した。


「土井さんこそ、アプリを使わなくても彼女できそうだけどな」

「いや~どうかな?彼女なんてしばらく作ってないからさ」


"作ってない"という言葉に若干の違和感を覚えつつ「それは意外」と答えると、早くも1杯目のビールを飲み干した土井さんはにやりとした笑みを浮かべた。


「彼女が欲しくてアプリやってるわけではないんだよね」

「え?じゃあどうして?」

「ん~、交友関係を広めるため?」


質問を質問で返され、さらに私の頭の中ははてなマークで溢れる。


だけどそこまで奥深く土井さんのことを知りたいわけでもないので、「へぇ~そうなんだあ」と当たり障りのない相槌を打ち、パスタを口に詰め込んだ。