「ねぇ、もえちゃんは何目的?」
「へ?……目的?」
乾杯、とグラスを鳴らしてすぐ。唐突な土井さんの質問にはてなマークを飛ばしながら、1口目のビールを喉に流し込む。
「あ~、もえちゃんってアプリ始めたばっかりなんだっけ?」
「うん。1か月前くらいに」
「そっか。もしかしてこうやって会うのも俺が初めてだったりする?」
「うん、実は。土井さんが初めて」
「はは、今のちょっとどきっとした」
軽く笑いながらグラスを口にする土井さんに愛想笑いを返し、目の前に置かれたランチセットのサラダに手をつけた。
注文を待っている間、敬語はやめて気軽に話してほしいと言われ、土井さんとはタメ口で話すことになった。
「土井さんはけっこういろんな人と会ってるの?」
「うーん、どうだろう」
「慣れてそうに見えるけど」
「ん~、初心者のもえちゃんよりは慣れてるかな。でも全然だよ?」
ぜーったい嘘だ。土井さんは間違いなくアプリ上級者、いや、玄人レベルかも。
そもそも土井さんはかなり女性の扱いに慣れていると思う。見た目の雰囲気もそうだし、話し方や距離の詰め方、話しているときの態度、全てから遊び人……よく言えばモテる男の風格を感じる。


