突然食べものを詰め込まれ、反射的にもぐもぐと口を動かした黎の顔がみるみるうちに曇っていく。
仰向けになっていた黎はがばりと起き上がり
「……さっいあく」と呟くと眉根をぐーっと寄せた。
黎にしては表情筋がMAXで働いている状態。
黎は甘いものが大の苦手。ケーキやチョコにフラペチーノ、生クリームなんて論外だ。
黎の口に突っ込んだのはチョコマシュマロ。マシュマロだけでも甘いのに、その中にさらにとろりとしたチョコが入っている。
きっと今、黎の口の中は大惨事だ。
「ふふ、黎大丈夫?これ飲みなよ」
なんとか飲み込もうと口を動かす黎へ、テーブルに置かれていたマグカップを手渡した。
「もえ、ふざけんな」
「ふふっ、…はは、ふははっ」
「……」
「へへへ、ふふはっ」
マグカップの中身はあまーいホットココア。
表情の乏しい黎が分かりやすく不機嫌になったのが可笑しくて可笑しくて、完全にツボに入ってしまった。
7歳下の子になんて大人気ないことをしてるんだろうと思いつつも笑いが止まらない。
「ふふふっ――――!?」
笑いすぎて目尻に溜まった涙を拭おうとした時、私の身体が右方向へと傾いた。


