ベイビー•プロポーズ

その会話の途中で再び目を閉じた黎に「あ、また寝た」と言うと「瞑想」と素早く返ってきた。


「7歳差なんて全然可愛くないよ」


黎の閉じられた長い睫毛に視線を送りながら、思った以上にか弱い声を出してしまった。


「どうして」

「黎が成人した時、私は27歳。アラサーだよ」

「うん」

「恐ろしすぎる」

「なにが」


目を瞑ったままの黎が「それこそわけがわからない」と抑揚なく告げる。


「男と女じゃ違うんだよ」

「だからなにが」

「男が年上で女が年下だったら、年の差があっても上手くいくと思う」

「そんなの人それぞれでしょ」

「ううん。年上の女と付き合ったとしても、いずれ絶対に若い子のほうがいいってなるに決まってる」


芸能人のニュースにしろ、周りの話にしろ、男が年上の年の差カップルの話はよく聞くけれど、女が年上のカップルは珍しい。1、2歳差ならまだ可愛いといえるけど、7歳差なんて……。


ついこの間も、6歳上の一般人と結婚している30代の俳優と20代のグラビアアイドルの不倫デートが報道されていた。


「もえ、俺の気持ちなめてるでしょ」


ぱちり、黎の目が開かれる。私を見上げる瞳からは静かな怒りが感じられた。


「俺の気持ち、全然わかってない」


じーっと強い視線を送られる。



……なによそれ。
全然分かってないのは黎も同じでしょ?


私の気持ちを分かってくれない黎に対する身勝手な怒りがふつふつと沸いてきて。


手にしていた袋からマシュマロを取り出し、やや開かれていた黎の口元へそのマシュマロを押し詰めてやった。