「もえ、ジャムいる?」
「もえ、目玉焼きには何かける?」
「もえ、ココアおかわりは?」
「黎、いいから一旦座って?」
キッチンから顔を覗かせながら、矢継ぎ早に質問責めをしてくる黎を落ち着かせようと立ち上がれば、「もえは動いちゃだめ」と逆に制された。
あの後結局、黎と一緒に2度寝をしてしまい、私たちが目覚めたのは正午を回った頃だった。
ベッドから起き上がった時、まだ若干頭痛がして「いたた…」と顔を歪めたところを黎にしっかり見られてしまっていて。ただの二日酔いなのにまるで病人のような過保護な扱いを受けている。
リビングのソファに座っている私の目の前には、やや焦げた食パンと歪な形の目玉焼き、そしてホットココアが置かれている。そこに3種類のジャムとマーガリン、醤油とソースの乗ったトレイを持ってきた黎がやってきた。
「もえ、俺がジャム塗ったげる。どれがい?」
「それくらい自分でできるから大丈夫だよ」
「いいから」
マーマレード、いちご、ピーナッツバターが差し出され、「じゃあ…」とマーマレードの瓶を指さした。
私の隣へと座り食パンを持ち上げた黎は、ザクザクと音を立てながらマーマレードをスプーンで塗っていく。


