ベイビー•プロポーズ


「もえがリビングのソファで寝てる時、あまりにも寝顔が可愛くて、つい」

「私が寝てる時に、キス、したってこと?」

「……うん」 

「それはいつ?」

「中3の春」

「……」

「それから同じようなタイミングで何回か」

「ねえ、もしかしてこの前私のベッドで一緒に寝てた時もしたの?」

「高校生になってからはもうしてない。キスだけじゃ止められなくなりそうだったから、我慢してた」


バツが悪そうな様子の黎はきゅっと唇を結んだ。


まさかのまさかすぎる自白に理解が追い付かない。


正面へ視線を置いたまま一旦フリーズしていると、申し訳なさそうに声のトーンを落とした黎は「これは墓場まで持っていこうと思ってた。ごめん」と呟いた。


「もえ、怒ってる?」

「怒ってないよ。ただ、びっくりはしてる」

「俺のこと、嫌いになった?」

「ううん、なってない」

「本当に?」

「うん、本当」


声色と瞳を不安そうにゆらゆらと揺らす黎に「怒ってないし、嫌いにもなってないよ」と念押しすると、やや口元を緩めた黎は「よかった」と力なく笑った。