ベイビー•プロポーズ


私のこの態度に黎が気付かないわけがない。いつもの黎なら敏感に察知して、何かしら声をかけてくるはずなのに。


黎は私の態度へ一切触れようとはせず、素っ気ない返事ばかりする私にただただ一方的に話を振り続けた。


結局、黎の提案で映画に行くことになり、今上映されている映画や時間を調べようと近くの公園へとやってきた。


遊具の種類が豊富で敷地の広い公園だけれど、18時近いということもあり子供たちの姿は見当たらない。私たちが座っているベンチから見えるブランコに制服姿のカップルが1組いるくらいで、休日の公園にしては閑散としている。


制服姿のカップルを見ていると、どうしても黎とさやかちゃんのさっきの場面を思い出してしまう。また1人、もやもやとした真っ黒な感情に襲われる。


「もえ、これはどう?前にドラマでやってた救命救急医のやつの続編」

「……」

「主題歌、もえが好きなバンドみたい」

「……」

「時間もちょうど良さそう」

「……」


スマホ画面をこちらに向けながら、無言を貫く私に構うことなく口を開き続ける黎。


そこで私の中の何かが、ぷつりと切れた。