この子、黎のバイト先にいた子だ。
マッチングアプリで土井さんに会った日。バイト先のDVDショップに訪れた時に見かけた、黎に話しかけていた子だ。
今日はツインテールだけど、あの時はポニーテールだった。うん、間違いない。
そういえばその時も、こんな風に黎へ触れていたっけ。
どうしてか私が気まずくなってしまって、2人から顔を背けると視界の端で、黎が掴まれていた腕を大きく振り払ったのが見えた。
「もえ」
黎だけを視界に入れているその子を完全にスルーする黎が私だけを視界に入れる。
私の名前を呼ぶ黎へ視線を向け直し、「なに?」と口にするより前にメイド服がふわりと舞った。
「あ、すいません。私急に割って入っちゃって……」
「いや、大丈夫だよ」
「伊藤くんのお姉さん、ですよね?」
「あー、うん。そうです」
「伊藤くんとすっごく似てますね!さっき、他の子たちとも話してたんです」
身体を90度回転させた女の子は私へ視線を合わせるとしおらしい笑みを浮かべる。黎に向けていたものとはまた違う、きっとこれは愛想笑い。
「よく言われるんだよねえ」と同じような笑みを見せると、その子はゆったりとした動きで首を傾げた。
「いくつ離れてるんですか?」
「え?」
「年齢です」
「あー…、7歳、かな」


