ベイビー•プロポーズ


ロボットのように両手両足をカクカクと動かしながら後ろを振り返ると、好奇な眼差しを一斉に受けた。


穴があったら入りたいとはまさにこの状況。猛ダッシュでここから逃げ出したい。できることならここにいる全員の記憶を消してしまいたい。それが無理なら数分前にタイムスリップさせて――


なんて現実逃避に走っていたところ「とりあえず端に行っとけば」と再び碧葉からの声がかかった。


言葉は発しないままこくこくと首を縦に振り、斜め前にいる美郷の腕を掴んで廊下の端の方へと足早に避難する。


碧葉たち3人が呼び込みのためにその場から立ち去ると、徐々にギャラリーも少なくなっていった。
――と、安心したのも束の間。


「ちょっと、黎が一緒に着いてきたらだめだよ」


気配を感じて振り返れば、黎が私の数歩後ろに立っていた。近すぎず遠すぎず、もしかしたら黎なりに気を遣ってのこの距離感なのかもしれない。


だけど黎が一緒にいたら目立つのには変わりないのに……。


「生の黎くん想像以上に美しいんだけどっ」

「……ありがとうございます」

「身長もめちゃくちゃ高いんだね」

「あ、はい」

「顔もちっちゃーい!」

「……」


この空気を気にすることのない美郷は、ぐいぐいと黎との距離を詰めると爪先立ちになって顔を覗き込んでいる。それに完全に圧倒されている黎はなんだか珍しい。