「猛禽……」
途中まで言って、伊藤さんは手で口をおさえた。
「なんですか?ずっと言ってるその猛禽女、って」
「い、いや。なんでも――」
「見苦しいですよ、女性が悪口を言っているのは」
――そもそも、勝敗は最初から貴女に軍配が上がっていたのに、南の方が割に合わない。
「悪口じゃないし」
「仕事もろくにしないで人の事を悪く言ってちゃあ、好きな人も振り向いてくれないんじゃないんですか」
「もう、それはいいんだってば」
「――いい?何が?」
「や、だから。もう、他に――」
リビングのソファに伊藤さんをおろすと、冷蔵庫から酔い覚ましのミネラルウォーターを差し出した。
「はぁ、――そんなものだったんですか」
「は?」
「とことん、ダメな人ですね」
「どーして坂口くんにそんなこと言われなきゃダメなの?だいたい関係ないじゃん」
関係ない――、ねえ。
「え。まさか猛禽女のこと、好きなの」
なんでそうなる。
「何度言わせるんですか。社内恋愛には興味ないですから」
「ほんとにぃ?」
聞けば聞くほど、揺らぐ。
掘り下げるだけ掘り下げて、何度も、問う。
