何ひとつ面白い話なんてしてないのに、嫌な顔ひとつ見せずに、笑ったその笑顔が頭から離れなかった。
どちらかと言えば俺には悪意すらあったのに。
仕事をしていくうちに、彼女だけがフラットな立ち位置で業務をこなしている事に気がついた。
女性ばかりの職場で、俺達男はそれは繊細に職務を全うしなければならなくて、普通ではいらぬ配慮をしないといけない事が多い。
「ねぇ、リク。伊藤さんともっと近づけない?」
「何を?」
本社に来ていた南に非常階段に連れ出され、
「リクって、その眼鏡伊達でしょ?」
「だから?」
「綺麗な顔そのままだと、色々と面倒なんでしょ?」
間違えてはいないので、否定は出来ない。
「伊藤さんって、普通の女の子とちょっとちがうし。リクと、案外上手く行くと思うんだよね」
くだらない。
