死ぬまでに、少女漫画のような恋がしたいだけ。


「月音さん!」

 担任の児玉(こだま)先生が私を迎え入れてくれた。たまに病院に来てくれる先生だ。

「本当に、来れて良かったわ。教室行きましょうか」
「...はい」

 おぼつかない足取りで教室まで行く。

 星惟はもう教室で待っていてくれているらしい。
 私と星惟の関係は、星那ちゃんが言ってくれているみたいだった。

「光野くん、本当に誰とも喋らないから、月音さんと仲良くできていてこちらも微笑ましいのよ」
「そうなんですね...」

 本当に、星惟は喋れないんだ...
 学校での星惟、どんな感じなんだろう。やっと今日見れる。

「ここが教室よ。あら、光野くんもいるわ」
「ありがとう、ごじゃ、います...」
「私はお母さんや看護師さんとお話してくるわね」

 先生は私を教室へ案内すると、職員室へと戻っていく。

「星惟!!」
「美來、よく来たな。大丈夫?」
「うん!わかんないこといっぱいだけど...」
「そりゃそうだよ。心配するなって」
「わかった」

 座席は本当に隣で、色々教えて貰いながら雑談もする。少し時間が経てば、他のクラスメイトも入ってきた。

「え!?もしかして月音さん!?」
「ほんとだ!月音さんいる!」
「めちゃくちゃ可愛いじゃん!」

 すごく大きな声でクラスメイトに名前を呼ばれたり手を振られたりした。

「っていうか光野めっちゃ笑顔じゃん。光野ってほんとうに月音さんの前では笑うんだ」

 私の前、だけ...?

「星惟、みらいの前でしか笑わないの?」
「...まあな」
「星那ちゃんの言ってたこと、本当なんだね」
「星那、何を言ったんだよ」
「んっとね〜星惟が喋れないって」

 こんな感じで笑いかければ星惟は笑う。
 それを見て、他の子達はびっくりしているよう。

「やばっ。光野顔真っ赤!」
「月音さんすげえ」

 外野に興味なんかないから、私は星惟との会話に集中した。