死ぬまでに、少女漫画のような恋がしたいだけ。


「美來?」
「え、あ、なんでもない」

 はにかんで、目を逸らした。

「花火大会行けたらいいな」
「うん...」
「僕も、美來と行きたい」
「星惟...」

 最後に、希望くらい持たせて。

「そういえば、星那も恋人出来たんだってさ」

 ...えっ?
 星那ちゃんに、恋人。

「え、そうなの!?」

 別に星那ちゃんが恋人できなさそうとか、そういうことじゃない。

 ただ、びっくりした。

「誰!?」
「僕のクラスメイト。小鳥遊(たかなし)
「タカナシ?」
「小鳥が遊ぶって書いて小鳥遊。鷹がいないところでは小鳥が遊べるかららしい」
「かっこいい苗字だね」

 小鳥遊さん、ということは出席番号が前の人?

「いつか、小鳥遊も連れてこようか?」
「星那ちゃんと小鳥遊くんがいいって言うなら」
「そうか。了解」
「星那ちゃんには余命のことバレてない?」
「うん。気づいてもない」
「よかった」

 私の余命は、星惟しか知らない。
 なぜだか分からないけれど、星那ちゃんに知られたくない。

「そうだ。これあげる」
「何...?」

 小さな袋包を貰った。
 破らないようにそっとテープを外すと、キラキラしたものが中から出てくる。

 宝、石...?

「学校の遠足で見つけたんだ。美來好きそうだなって星那と話して買った」
「あ、ありがとう...!」

 家族以外の誰かからプレゼントなんて初めて。

 キラキラ光る、ピンクの宝石のペンダント。

「僕は緑。星那は青。みんなお揃いだよ」
「嬉しい!」
「喜んでもらえてよかった」

 一生大切にする。
 ...まあ、一生が私は短いんだけど。