死ぬまでに、少女漫画のような恋がしたいだけ。


 あの後、美來の門限が来て僕は家に帰った。

 僕らは高校3年生だから受験生に当たる。
 けれど、正直今は受験よりも美來の方が大切だ。

「僕といる時だけは、笑ってろよ...」

 これを美來の前で言えない僕に憤りを憶える。
 こんなの、ただのダサい男だ...

「星惟、何ブツブツ言ってんの?」
「別に...」

 星那も、分かってるんだろうな。僕と美來のこと。

「美來ちゃんのことなら、あんた恋愛馬鹿だね」
「うるさい」

 星那のニヤニヤが今はうっとうしい。

 美來の余命を星那は知らない。自殺未遂の時も、星那には誤魔化した。

 余命なんて告げては、美來が望む普通の女子高生という夢を、叶えてあげられないと思ったから。

「美來ちゃん、早く退院出来たらいいのにね。あんなところにずっといたら、そりゃ生きるのも嫌になるよね」

 それを、星那は本気で信じている。
 今まで普通だったのに、この数年、ずっと外に出られていないということを。

「そうだな」
「美來ちゃん、星惟と同じクラスで良かったよね」
「そうだな」
「私も、美來ちゃんが来たら休み時間毎日星惟のクラス行こ」
「友達はいいのかよ」
「大丈夫だよ。別に」

 僕からしたら今の話は現実味が湧かない。
 でも、いつか本当にそうなってくれ。

 神様がいるのなら、僕は、美來のことを祈る。