頭の中は星惟でいっぱいだった。
アメリカに行けば、少し長く生きられるかもしれない。でも、星惟には会えない。
アメリカにいる期間と、プラスで生きられる時間はどれだけ差があるんだろう。
延命治療のためだけにアメリカに行って、それでも死ぬなら、好きな人と最期までずっといたい。
星惟に言ったら、「生きてほしい」って言われるかな。お母さんとお父さんは、無理矢理にでもアメリカを勧めてくるかな。
でも...
そんなことを考えていたらお母さんとお父さんが入ってくる。2人とも、目を輝かせているって思ってたのにそんなことはなかった。
「美來、アメリカのこと、聞いた?」
「うん」
「どうしたい?」
お母さんは私を見ている。
その目は、「治療してほしい」と思う目ではなく、「美來の意思はなに?」という目だった。
「アメリカ...行きたくない...だって、どうせ死ぬんでしょ。それなら...最期までずっと...大好きな人といたいよ...アメリカで死んでしまう可能性だってあるのに...大好きな人たちと離れたくない...」
生きたいのに。死にたくないのに。
現実が残酷すぎて、泪が止まらない。
「今は、そうなんだね」
「うん...」
「わかった。もし変わったらまた言って。でも、お父さんは美來がそれでいいなら、それでいい」
えっ...?
「いいの...?」
「ああ。これまでろくに外にも出られず、つまらない思いいっぱいさせたから、自分の最期くらい、自分で決めなさい」
「そうね。本当は、1日でも長く生きてほしい。けれど、それで美來が辛い思いをするなら、それは違う」
お父さん...お母さん...
本当は私だって生きたいよ。死にたくないよ。
それは、お母さんもお父さんも一緒だよね。
ありがとう。私の意思、尊重してくれて。
