死ぬまでに、少女漫画のような恋がしたいだけ。


 自分だけ突っ走ってる気がするけどいいんだよね。

 私は1年後にはもういない。
 もし私の想いが叶ったとしてもそれは、星惟くんとさようならが付き物。

 それは、何度だってわかってる。

 比較的すぐ読める小説にも余命と恋の小説があって、そのヒロインはお互いの片想いで終わっていた。

 私も、星惟くんに気持ち伝えない方がいいのかな。
 もし向こうから告白されても、突き放して...

 でも、そんなことができないって分かってる。

 星惟くんと会えなくなるなんて、それこそ無理。


 ガチャ

「美來ちゃんっ!」
「せ、星那ちゃん!?」

 バサッ

「美來ちゃん!?どうしたの?」

 少女漫画をうっかり落としてしまう。
 恋の勉強なんて、恥ずかしくて、言えない。

「少女漫画?好きなの!?」
「え?あ、まぁ...」
「そうなんだ!早く教えてよー!」

 ...星那ちゃん、なんだか、勘違い?
 良かった...

「星惟もあとから来るよ。今日、なんか先生に呼ばれてたから遅くなるかも」
「そうなんだ。ありがとう」

「それでさ、美來ちゃんと星惟って付き合ってるよね?」
「えっ...」

 付き合って、る...?

 あれは、付き合ってるからなの?
 あの時のキスを、私はまだ鮮明に、唇のぬくもりまで思い出すことが出来ていた。

「見たらわかるよ。美來ちゃんも、星惟も。星惟なんて、今まであんなに根暗野郎だったのに、美來ちゃんに出会って双子の私でも見違えるくらい雰囲気が和やかになった。相変わらず学校には友達いないみたいだけど、美來ちゃんと話してるだけですごく楽しそうだもん。星惟のこと、よろしくね」

「星那、ちゃん...」

 私にはそういう知識がないから、どこまでが本当でどこまでが星那ちゃんの想像なのかがわからない。

 星惟くんに付き合ってくださいとは言われてない。
 お互いに、好きだとも言っていない。

 あの、キスだけ。