死ぬまでに、少女漫画のような恋がしたいだけ。




 病室のドアが開く。

 私の目には、泣き腫らしたような目をした星惟くんが映った。

「美來!」
「星惟く...」

 ガバッ

 お母さんと同じように強くギューッとしてくれた。
 私も彼の背中に手を回す。

「もう、二度とあんなことすんな」

 私の耳に囁くように星惟くんはそんなことを言う。

「ごめん、ね...」

 私も星惟くんをぎゅっとする。
 星惟くんの体温が高いのか、あったかくてふわふわな心地がした。

「星惟くん、ありがと...」

 私の手、掴んで戻してくれたんだよね...
 命懸けのはずなのに。

「美來が生きてたらそれでいい」

 えっ...

「...ッ」

 わかってるよ、わざとじゃないって。
 でも、私は近くして死ぬ。

 死にたいけど、死にたくない。

 これを矛盾っていうんだ。

「た、退院したかった...」

 これを口に出したら私の目から大粒の泪が流れる。
 水でぐちゃぐちゃになった顔を、星惟くんの胸元にうずめる。

 何も言わずに、彼は受け止めてくれた。

 管であまり動けない私が、もたれやすいように近づいてくれる。

「退院できなくても、僕が毎日ここに来るから」

 その言葉があったかいのに、また星惟くんは私をギューッとして離さない。余計にあったかくなる。

「うん...」

 星惟くんとお出掛けしたかった。
 でも、これだけで今は幸せ。

 また管は増えちゃったけど、今まで以上に星惟くんに対してのドキドキが強くなっている。