死ぬまでに、少女漫画のような恋がしたいだけ。


「美來ちゃん、やりたいことないの?」


 数年前から担当してくれている看護師の愛菜(あいな)ちゃんがそう聞いてきた。

 ...やりたいこと、か。


 昔は他の子みたいに学校のイベントに参加したいとも思ったし、早く退院して大きな遊園地に行きたいとも思った。

 だけど、今は何やっても無駄ってわかってるから。

 悲観的にしかなれなかった。


 本当はやりたいことだってあるのかもしれないけど、考えることが怖かった。

 心の底にある私の気持ちに頑張って蓋をした。


 気づかないように、平然を装った。


「特にないかな。生きてたらそれでいい」

 思ってもいないことを、愛菜ちゃんには告げた。
 ずっと私に寄り添ってくれた人にも、嘘を突きつけなければやっていけない気がしたから。

 本当はこの時私は助けて欲しかったのかもしれない。