死ぬまでに、少女漫画のような恋がしたいだけ。

「死なんて、誰でも来るけどな」
「そうだね。誰でもいつかは死ぬ」
「美來があと100年生きるかもしれない」
「そんな未来が、私に訪れたらいいのにね」

 星那ちゃんがいなくなってからは、ずっと病気の話をしていた。

「星那には、余命のこと言ってないから」
「うん」

 星惟くんは私にどこまでも気遣ってくれる。
 優しくて、あったかい人。

「星惟くん、一時退院したら一緒に都会行きたい」
「都会?」
「うん...いつもお母さんは駄目って言うけど、最後かもしれないって言ったら行けると思うんだ」

 余命を言い訳になんてしたくない。
 でも、こうでもしなきゃ夢は叶わないもんね。

「僕、美來のお母さんにとって悪者にならない?」

 え、星惟くん、そんなこと心配してるの?

 可愛い、かも。

「大丈夫。愛菜ちゃんにも説得してもらうから」
「ならいいよ。退院できたらいいな」
「うん!」

 私が勢い良く返事をすると星惟くんは微笑んで私の頭を撫でてくれた。

「えっ...」

 いつもなら、こんな気持ちにならないのに。
 ドキドキする...

 "恥ずかしさ"と"嬉しさ"が混ざる。

 星惟くん、こんなことする人だったの...?

「あ、ごめん。つい妹みたいに...」

 い、妹!?
 私妹に見えちゃうの...?

「星惟くんひどいよ。私、星惟くんと同い年!」
「ふっ。ムキになるな。余計妹っぽく見える」
「うっ」

 いつもより子供っぽくなってしまう私。

 精神年齢が低いとはよく言われるけど、こんな風にさせるのは星惟くんだけ。