死ぬまでに、少女漫画のような恋がしたいだけ。

「じゃあ、私は用事あるし先帰るね」
「星那ちゃんまた来てね」
「うん!」

 星那ちゃんが先に帰り、私は星惟くんと2人きりになった。

「月音さん...?」

 星惟くんがこちらを見てくるものだから、私は少しばかり緊張してしまう。

「月音さん、元気なってよかった」
「うん。私も」

 久しぶりで、辿たどしくなってしまう。

「月音さんはさ...」

          「美來」

「えっ...?」
「美來って、呼んでほしいの。駄目...?」

 苗字で呼ばれることに、慣れてないから。
 それに、いつまでも苗字で呼ばれたら変な感じがする。友達なのに、なんでって思うもん。

「わかった。じゃあ、美來」
「うん」

 未来がないのに、美來って名前。
 自分では、あんまり気に入っていなかったけど、星惟くんにこうやって呼ばれるの、嬉しい。

「星惟くん、今日の講演どうだった?」

 ずっと気になってた、ALSの人の話。
 昔、私の部屋の隣の人がALSの患者さんだったことがあった。今は、どうしているのか、知らないけど。

「取り繕って、明るくしようとしてるんだなって思った。僕達に話すために、わざと」
「そっか」

 そう、だよね。
 不特定多数の人に悲しさとか辛さなんか見せたくないもん。私達も、普通の人間なんだから。人より早く死んじゃうだけ。

「美來のことも、その人のことも、全部理解できるかって言われたら、難しとこもあるけどさ。外部の人間が、口出すことでもないんだろうな。こういうの」
「そう、だね...」