死ぬまでに、少女漫画のような恋がしたいだけ。

「星惟くん...」
「ん?」

 あの暗い表情が見てられなくて、彼の肩をポンポンと叩いた。

「これ、どういうこと?」
「あー、それなぁ」

 持ってきてくれたプリントを見て話を逸らす。
 プリントには、"指定難病について学ぶ"と書いてあった。

「毎年、この学年がやってるらしいよ」
「こんなの、やるんだ...当事者が話すの...?」
「そうらしい。ALSの人だったかな」
「ALS...」

 ALSは筋肉の病気。
 最後は全ての筋肉が動かなくなって、人工呼吸器と寝たきりになるんだよね。

「講演に来るってことは、初期段階くらいの人なのかな」
「そういうこと、になるかもね」
「...病気の種類は違うけど、私の方が話せそう」

 私が講演なんて、出来っこないけど。
 笑い話で済まそうと思って言ったのに、星惟くんは真剣な眼差しになった。


「余命のこと、知られたくないんだろ?」
「...えっ?」

 何、急に...

「無理、したら駄目だから」
「...ッ」

 星惟くんの言葉に、何かの糸が切れた気がした。