【原版】それは麻薬のような愛だった



これまで気にもしていなかったのに、何故かその瞬間言いようのない心地よさに包まれた気がした。
それと同時に、喉から手が出るような渇きに襲われた。



ーー触れたい。


明確にそう思ったのは初めてだった。


その後式が終わると同時に雪崩のような人混みを掻き分け雫を見つけて声をかけた。


「いっちゃん」


ーーやっぱりだ。


雫の声で名前を呼ばれた時、乾いた土に水が浸透するように満たされていく。

それからは適当な理由をつけて無理矢理車に押し込み、夜に会う約束をこじつけた。

一瞬雫の顔が強張ったが、それも見間違いかと思うほどすぐに元に戻り、笑顔で了承した。





時間の少し前に迎えに行けば、私服に着替えて髪を下ろした姿で家から出てきて、特別センスが良いわけでもないのにその素朴な姿にかわいいなと咄嗟に思ってしまった。

話す時間すら惜しくホテルの部屋に入るなり小さな唇にキスを落とせばそこからはタガが外れたようにみっともなくがっついていた。

一瞬雫が抵抗したような気がしたが、時々漏れ出る甘い声を聞いてしまっては、余裕なんてものはとうに消え失せていた。