泣きたいのはこちらの方なのに、どうして君がそんな顔をするの。
けれどどれだけ酷いことをされたって、悲しいかな、嫌いになんてなれない。
「分かってるよ。私が君の一番になれない事なんて、ずっと知ってる。…だけどね、もう駄目なんだ」
「…は?何言って…」
「いっちゃん、好きだよ」
ずっと言えなかった、胸に秘めて秘めて殺そうとしていたものを、漸く吐き出せた。
消そうとした。
けど、どうしても消えてくれなかった。
「ずっと好きだった。今でも好き。だからもう耐えられないの、いっちゃんが他の人のところに行っちゃうの」
自分だけを見てほしい。
自分だけを愛して欲しい。
自分だけのものになって欲しい。
一度開いてしまった欲の塊はもう押し込む事は出来なくなってしまった。
だけどもういい。覚悟は決まった。
大好きな人と離れて、大好きな人の子供と暮らす。
もう都合の良い女では居られなくなってしまったから、せめて君の面影を追う事だけは許して欲しい。
そっと下腹部に手を当て、目を閉じた。
ーー大丈夫。君と生きるって決めたよ。



