【原版】それは麻薬のような愛だった




どれほど眠ったのか、ふと目を開くと乱雑になっていた部屋が綺麗に片付けられていた。


伊澄はもう帰ったのだろうかとゆっくりと起き上がりベッドから降りる。
相変わらず胃の不快感は拭えないものの、今朝よりは少し動けるようになっていた。

部屋の中を見渡せど、伊澄の姿は無い。
けれど彼が持ってきたであろう鞄やお土産の袋、何よりスマホがテーブルに置かれている事から帰宅したわけでは無いようだと判断した。


喉の渇きを感じて冷蔵庫から炭酸水を取り出してコップに注ぐ。
飲み物も水すら気持ち悪くなり、さっぱりとしたレモン風味の炭酸水なら飲めることを知ってからはそればかり飲んでいる。


コップを持ってソファに腰掛ける。
かなり荒れていた部屋は元の姿を取り戻しており、後できちんとお礼を言わなければと思った。




ーーああ、どうしよう。


今は風邪と言って誤魔化しているが、長くは隠し通せない。
悪阻もいつ落ち着くか分からないし、親や職場にも話さなければならない。

都合の良い女でいよう、どう思われてたって構わないと思っていた。

けれど…やはり、嫌われ軽蔑されるのだけは耐えられそうにない。


ぐるぐると思考を巡らせていると、ポンと短い音と共に放置された伊澄のスマホの画面が光った。



そしてそこで見えてしまった通知の内容に、目の前が真っ暗になった。