【原版】それは麻薬のような愛だった





「…いっちゃん、どうしたの?何かあった?」
「何かあったのはお前の方だろうが。…俺は単純に昨日まで長期で出張行ってたんだよ。一体何があった」


しばらく来なかったのは仕事だったのか、とぼんやりと思う。


「…ちょっと、風邪を拗らせちゃって」


真実を告げず、嘘をつく事にした。
今はまだ、本当の事を言って軽蔑される覚悟ができていなかったから。


「病院には行ったのか」
「…うん、行ったよ」
「薬は」
「…飲んだ」


そこまで言って、少しだけ伊澄の顔が少し安心して見えた気がした。

気持ちが弱っているせいだろうか、自分を心配してくれる伊澄にひどく縋りたくなってしまった。


「…いっちゃん」
「何だ」
「ちょっとだけ…頭撫でてくれる?」


そう言うと、伊澄は手を伸ばし優しく頭を撫でた。

大きな手のひらに包まれる心地よさに、また少し眠気が襲ってくる。


「片付けなんかは俺がやるから、寝てろ」
「うん…ありがと…」


微睡の中そう言い、間も無く雫は静かに寝息を立てながら眠りについた。