【原版】それは麻薬のような愛だった




こんな時でさえ彼が浮かんでしまう自分に嫌気が差した。
全て自分の責任だ、この子に罪はない。


ぽろりと目から涙が落ちた。

涙を流したのなんて二十歳のあの日以来だった。


その日はずっと、まとまらない感情にずっと涙していた。












自覚したせいなのか、翌日から悪阻に苦しめられた。

週末が明けて仕事に出たが、不思議なことに仕事場ではそれほど辛いとは感じなかった。

けれど家に帰ると反動なのか何もできず、部屋は荒れる一方。
何よりまずいのは食事ができない事だった。

何を食べても、お茶を飲んでも気持ちが悪い。

世の中の母がこんなに辛い思いをしているのかと思うと、母親を尊敬する気持ちと同時になんでこんな苦労を課すのかと人体の原理を恨んだ。


それと同時に変化する体に確かに自分の中で命が育っている事を感じ、日に日に我が子への情が増していく。

もし堕すなら早い方が良い、そうは分かっていても今の自分にそんな事は出来るはずがなかった。




次の検診まで一週間を切った週末、その日もベッドから起き上がれずグッタリとしていると来客を知らせるインターホンが鳴った。