「どうして…」
相手は一人しかいない。
けれど伊澄はいつも避妊だけは完璧だった。
時期を考えてもあの日、酒に溺れて記憶を無くしたあの日しか考えられない。
けれどだからといってあの伊澄が避妊を怠るだろうか?そんなはずはない。
となれば、何万分の一の確率と言われる程のその中に当てはまり失敗してしまったのだろう。
「……」
お腹に手を当てるが、今はまだ何も感じない。けれど確かに此処に存在している。
選択肢は二つ。
産むか、堕すか。
けれど産むという選択肢をしたところで、きちんと避妊をしていたはずの伊澄が自分の子だと認めるだろうか。
彼の中では自分が男なら誰でも体を許すと思っている可能性も否定できない。
ーーそれなら、堕す?
そう考えるたとき、咄嗟に浮かんだのは「イヤ」の二文字だった。
母性なんてそんな高尚なものじゃない。
せっかく授かった命なんだから、などの綺麗事でもない。
ただただ、手放したくないと思ってしまった。
けれどそうなると、一人で産んで育てる事になる。
そんな事、可能なんだろうか。第一親にはなんて説明する?
それより何より、
ーー伊澄は、どう思うんだろう。



