【原版】それは麻薬のような愛だった







それから半月後、雫は事務所の給湯室で頭を下げる同期と対峙していた。


「合コン?」


怪訝な顔で言えば、涙目の同期が「違うよ!」と勢いよく詰め寄る。


「食事会!男女数人で集まって楽しく呑むの!」
「だから合コンじゃん」
「もー!今時合コンなんて死語だよ死語!ねえ雫お願い!今日だけでいいから参加してよ〜」
「やだよ面倒くさい」


擦り寄る同期の女子をバッサリと切り捨て、雫は手に持っていたコーヒーを一口啜る。

どうやら一応食事会と銘打ってはいるもののその実合コンなので男女比が合わないのは都合が悪いらしい。
だというのに今朝急にドタキャンが出てしまったため、これまた迷惑なことに身近にいた雫に白羽の矢が立ってしまった。


「お願いだよ〜せっかくの出会いの機会を逃したくないんだよぉ」
「他当たってよ、私興味ないもん」
「雫はそうかもね!でも私は違うの。30までに結婚したいのにもう26なんだよ?焦るじゃん!」


目標とする年齢がそこならば、同期が焦る気持ちも分からなくは無い。

だがここ最近は仕事が忙しく正直疲れているので、せっかくの貴重なプライベート時間を無駄な時間で潰したくはない。


それに毎年クラス替えやら何やらで新しい出会いに胸を膨らませていた学生時代とは異なり、社会人になり目新しいものに触れる機会が減った今、よく知らない人間の中に入る事がどんどんと億劫になってきている。