【原版】それは麻薬のような愛だった



断ろうかと思ったが、ふと考えてやめた。


「…分かった」


少しの沈黙の後、雫は静かに了承した。
そのまま車を降りてなけなしの礼を伝えてドアを閉めると、車はそのまま去っていく。


断らなかったのは、もちろん理由がある。

今の雫は男を受け入れられない。
それならそんな姿さえ見れば伊澄も自分に興味を失い、二度と自分にセフレになる事強要してこなくなるだろうと思ったからだ。


車が見えなくなるまで見送った後、雫は家の中へ姿を消した。














約束の午後7時。
母には急遽同窓会に参加する事にしたからそのまま友人と外泊すると伝えて出てきた。

特に反対される事なく家を出ると、昼間と同じ車が家の前で待っていた。


「待たせちゃった?」
「待ってない」

素っ気なく返して、伊澄はシフトレバーをDに入れ発進させた。


どちらも声を発さない無言の車内の中、雫はチラリと伊澄を覗き見た。

振袖に合わせてアレンジしていた髪を下ろすために風呂に入った雫と同様に、伊澄もシャワーを浴びたのか昼間と違い伊澄の髪はなだらかに下りていた。


少し髪の伸びた伊澄は、ますます色気を増した気がする。
身体も鍛えているのか長袖の服を着ていても整った体付きなのが見て取れる。

この男は一体どこまで育つのだろうと恐ろしくも感じた。