【原版】それは麻薬のような愛だった



また嘘をついた。
家に殆ど帰らなかったのは、何となく嫌だったから。

伊澄の家でだけでなく、何度も自分の部屋でも彼とは身体を重ねてきた。
家に帰るとどうしても思い出してしまうから出来るだけ距離を置きたかった。

もちろん、大学が楽しいのも本音だがやはり大きな理由はそちらだ。



見慣れた景色の中、中学の夏の日に立ち寄ったコンビニが見えた。


…あの日、自分が伊澄を拒絶していたら何かが変わったんだろうか。


そうこう思考を巡らせているうちに雫の家の通りに入り、ふと大事な事を思い出す。


「そういえば、話ってなに?」


伊澄の方から切り出してくるかと思いきや結局何も言ってこない。

開口一番にした話がしたかった訳でもないだろうに。


雫の問いに伊澄は直ぐには答えなかった。
どうしたものかと悩んでいると気付けば車は自宅の前に着いてしまった。

このまま降りてもいたのだろうかと迷っていると、伊澄が重い口を開いた。



「雫、お前あっちに戻るのはいつだ」
「…明日…昼出発の予定だけど…」



…ああそうか。なんとなく話が見えてきた。


「今夜7時、迎えに来る」


やっぱりだ。

伊澄はまた繰り返そうとしているのだ。


こちらから切ったのが余程癪に障ったのだろうか、確かにいつも主導権を握っていたのは伊澄だったからそう思ってもおかしくはない。