「伊和は?あいつは連れて行くの?」
空が両親に問いかける。
「空が試験頑張ったんだから、何も努力してないあの子なんて連れていくわけないじゃない。」
母が嘲笑うように答える。
「そうだぞ、空。家族三人で行こうな。」
父は僕を家族だとは思っていないようだ。父の口から出た、"家族三人"という言葉に苛立つ。
「父さん、それは酷いって。いくら出来が悪いからってさぁ。」
と、空が半笑いしながら言う。
空は、外では可哀想な弟を庇ってあげる、優しい兄を演じている。
やめろよ、伊和に謝れよ。
伊和なんてなにも悪くないだろ。
心にも思ってないのに、こんな言葉がどんどん出せる空が怖くて仕方ない。
家では、両親と一緒になって僕のことをバカにしているくせに。
