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午前2時、大半の人が寝静まり、明かりが消えた暗い夜。
僕は何も持たず、家を飛び出す。
真夏なので、深夜になっても蒸し暑い。
そして、近所の廃墟の階段をを駆け上る。いつもはすぐにバテるはずなのに、今は疲れを全く感じない。
屋上に到着した瞬間、ぬるい風が体を駆け抜けた。
屋上は、そこまで高い訳では無い。僕が知っていて、この時間に出入りできる建物はここしかない。
頭から落ちれば上手くいくはずだ。
そう信じて、自分の身長の50cmほど低いフェンスにそっと手を置く。
熱を吸収しているのか、火傷してしまいそうに熱い。
普段見る分にはなんとも思わない景色に、なぜか恐怖を感じる。
死にたいはずなのに、体が動こうとしない。
