「この出来損ないが!」
「一家の恥なのよ、あんたは!」
―あぁ、消えてしまいたい。
月岡伊和、高校二年生。何も取り柄のない男。
両親は、出来の悪い僕のことがどうも気に入らないらしい。何をしても否定ばかりで、ろくに褒めてもらった記憶が無い。
あいつらは、出来の良い双子の兄、空を溺愛し、何をしてもパッとしない弟の僕には暴言を吐く。
溜まったストレスのはけ口も僕だ。
酷い親だろ。
「空ったら、また試験で学年一位だったのよ。」
「空、偉いぞ。頑張っているご褒美に夏休みも始まるし、家族で旅行に出かけるか。」
「まじで?やったー!!」
階段を降りてリビングのドアをを開けようと、ドアノブに手を置いたときだった。
両親と空の楽しそうな会話がドア越しから聞こえてきた。
これで何回目だろう、慣れた光景にうんざりする。
