バツイチ美女と 御曹司

そんな花々を観察しながら少し元気のない
花は取り出して水切りをして

「頑張って、水をたくさん飲んで
元気になってね。」

と声をかけて又バケツに戻す。

しっかり咲いている花には

「あなた達きれいね。素敵」

つぼみの花には
「もうすぐキレイに咲くね。
たくさんお水を飲んで大きなお花を
咲かせてね。楽しみ!」

これはロンドンやパリのフローリストで
働いていた時のマリのくせで、
日本語で話せばだれにも聞きとがめられない
ので、いつしか花に話しかけていた。

日本語を話す機会が皆無だったマリの
話し相手が花だったのだ。そこに、

「君は花と話しているの?」

と笑いをこらえるような低くて心地いい声が
聞こえてきた。

恥ずかしくなったマリは

「ええっと、お花もほめてあげたり
元気付けてあげると喜ぶと思って…
すみません。
変なところをお見せしてしまって。」

「いえいえ、素敵ですね。
楽しく拝見しました。こちらのお店の方?」