バツイチ美女と 御曹司

菊枝はマリとの約束を破ってしまって、
きっと気落ちしているだろう。

菊枝には悪い言事をしてしまった。

ほんとに自分の事しか考えていなかった。

裕に知られないためにどう身を隠すか
必死に考えて、結局ナタリーを頼って
しまったのだ。

優依と菊枝には、後で連絡して
謝らなくてはと心に刻む。

社長との話し合いでは椿ばかりか秘書の
山田まで辞表を提出したとは、
これもまた驚きだ。

社長に呼ばれたとき、コーヒーを
出してくれた好々爺のような優しい
まなざしを思い出した。

山田さんというのかと、マリをそんな
ふうに評価していてくれたなんて嬉しい。

あの時は自分の気持ちに蓋をして
取り乱さないようにするのが精いっぱい
だった。

結局コーヒーには手を付けられなかった。

でも温かいまなざしはありがたかった。

椿は家を出るとまで言ってくれたらしい。

一番社長に詰め寄っていたのは椿だと
裕は笑っていた。

その話を聞いてマリはまた泣けてきた。

裕はそんなマリの涙を指でぬぐいながら